外壁塗装の産廃処分費と諸経費は必要?

この記事の監修者

佐伯 明彦 (株式会社ソラ SOLA)

所有資格外壁診断士

外壁施工において構造性能や耐火耐久性能など外壁塗装をお考えの方に対して アドバイスをおこなっております。


外壁塗装を検討される際、まずは見積りを取るところから始まります。その見積書を見た時に、「産廃処分費って何?」「諸経費とは?」などと疑問に思われた方は多いのではないでしょうか。

多くの場合、外壁塗装の見積りには「産廃処分費」や「諸経費」が計上されています。
しかし、内訳が記載されていないことが多く、施主様からすると、とても不透明な項目に見えることと思います。

そこで今回は、外壁塗装の見積りにおける「産廃処分費」や「諸経費」について解説させていただきたいと思います。見積書における不透明な部分をご理解いただくことで、塗装業者の姿勢を判断する際の参考になれば幸いです。

1.産廃処分費とは

塗装工事で出た廃棄物のほとんどは産業廃棄物に分類されるため、通常のゴミとして出すことができません。この廃棄物の処理にかかる費用のことを産廃処分費といいます。

業者によっては諸経費の中に産廃処分費を含んでいる場合もあり、見積書に産廃処分費の項目がない場合もあります。

・塗装工事における産業廃棄物とは

塗装工事で出る廃棄物には、余った塗料、塗料缶、養生したシートやテープ、使用済みローラーや刷毛を洗った有機溶剤、サイディング外壁であれば撤去した旧シーリングなどがあります。
屋根の葺き替えや外壁の張り替え工事があると、廃材の量は更に増えていきます。

これらの廃棄物は専門の産廃処理業者が回収・処理します。
余った塗料はひと缶ごとににいくら、その他の廃棄物はキロあたりいくら、といったかたちで処理費用が発生するのです。

・産廃処分費を支払わない塗装業者はどうなる?

塗装工事には必ず産業廃棄物が出ます。

もし、処分費用を惜しんで産業廃棄物を不法に投棄すれば、5年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金という厳しい罰則が廃棄物処理法で規定されています。

産廃処分費以上のリスクを覚悟してまで、産廃処分費を支払わないということはまず考えられません。

・見積りに産廃処分費が計上されていない場合

もし産廃処分費を計上していない見積りがあるとすれば、塗料の余りを使い回して廃棄物として出さないようにしているか、諸経費と同様に見積り内で分散させ計上していることになります。

塗料は空気や水分に触れると反応し硬化してしまうため、塗料メーカーは一度開缶した塗料はなるべく早く使い切ることを推奨しています。
保管期間にもよりますが、塗料の余りを使い回すことは、工事の仕上がりや完工後の不具合の可能性を考えるとおすすめできません。

業者はそのようなリスクを回避するため、現場ごとに余った塗料を処分する費用として産廃処分費を見積りに計上しているのです。

きちんと見積りに計上している業者の方が誠実かつ安心といえるのではないでしょうか。

2.諸経費とは

諸経費は、現場管理費(現場でかかる経費)と一般管理費(会社運営でかかる経費)の二つに分けられます。

●現場管理費
 ・労務管理費:現場管理作業員の人件費、作業用具費など
 ・通信交通費:材料運搬費、交通費、駐車料金など
 ・保険料: 請負業者賠償責任保険、労災上乗せ保険など
 ・租税公課: 契約書の印紙代など
 ・補償費: 近隣対策費など
●一般管理費
 ・労務費: 営業、社内管理にかかる人件費など
 ・広告宣伝費:チラシやWEBの広告費用など
 ・事務用品費:事務用消耗品費用など
・減価償却費:車両の償却費など
 ・事務所家賃

会社や現場を運営する上で必要な経費ですが、これらを全て見積書に記載するとかなりの量になってしまうため、諸経費としてひとまとめにされています。

金額については業者により異なりますが、多くは工事金額の5%~15%ほどだと言われています。
事業規模などによっても大きく異なる項目のため、多く計上する業者もあれば、まったく諸経費を計上しない業者もあります。

・見積りに諸経費が計上されていない場合
もちろん施主様にとっては、余計な費用はかからない方がいいですし、また人によっては、「なぜ施主が諸経費を負担しなければならないのか」と感じる方もいるかもしれません。

では、見積書に諸経費を計上していない業者は一概に優良業者と言えるのでしょうか。

・諸経費は会社や現場を運営する上で必要な費用

先にも述べたように諸経費は会社や現場を運営する上で必要な費用となります。

施主様から支払われる工事代金が塗装業者の売上の全てである以上、諸経費という項目を見積書に記載している・いないに関わらず、諸経費は工事代金の中から捻出されます。

そのため、諸経費が見積書に記載されていない場合、理由は次の2つが考えられます。

① その他にかかる費用を削り諸経費に充てている
まず1つ目は、必要な費用を削って諸経費を捻出している場合です。
仮に人件費や材料費など工事に直接かかわる費用を削って諸経費に充てているとすれば、工事の質の低下に繋がる恐れがあります。

② 諸経費と記載せず、見積りのどこかに上乗せして諸経費分を回収している。
そして 2つ目は、諸経費として計上せず、他の項目に上乗せすることで諸経費分を回収している場合です。
諸経費という項目が無いだけで、施主が支払う金額は同じです。

「当社は諸経費をいただきません」と謳う業者と、諸経費として正直に計上し、かつ諸経費がどういったものかを説明できる業者、どちらの業者が誠実で信頼できる業者でしょうか。

3.おわりに

今回は塗装工事の見積書に記載されている「産廃処分費」と、「諸経費」について解説させていただきました。

見積り金額を比較するだけでは、どの業者が良いのかを判断することは非常に困難です。

施主様の目線で考えると、必要な費用が明確になっていることや、その根拠について説明できるということが、信頼できる業者を見極める大事な要素になると言えます。

今回の記事を参考にしていただき、後悔の無い外壁塗装をしましょう。

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