無機塗料の対応年数とおすすめメーカー

この記事の監修者

佐伯 明彦 (株式会社ソラ SOLA)

所有資格外壁診断士

外壁施工において構造性能や耐火耐久性能など外壁塗装をお考えの方に対して アドバイスをおこなっております。


今ある中で最長の耐用年数を誇る塗料としてここ数年注目を浴びている「無機塗料」をご存じでしょうか。
他の一般的な塗料と比べて高額ですが、圧倒的な耐用年数により塗り替え回数を減らせるため、実はコストパフォーマンスにとても優れた塗料として、近年取り扱う業者も増えてきています。

しかし無機塗料の使用には注意点もあります。選び方を間違えると期待通りの仕上がりにならず後悔することになってしまうかもしれません。

そこで、今回は無機塗料が長持ちする秘密とメリットから、無機塗料を選ぶ際の注意点、おすすめ製品などをご紹介いたします。

無機塗料とは

無機塗料は、塗料の原料に無機物を配合した塗料です。無機物とは、石やレンガ、ガラスなど炭素を含まない物質で、紫外線で劣化しないため無機物自体は半永久に耐久します。

この無機物100%の塗料が作れれば、半永久的に耐久する塗料が作れるかもしれませんが、このままだと固すぎて塗料として塗ることはできません。そこで、無機物の耐久性を活かしつつ、合成樹脂などの有機物を混ぜて塗料として塗れるようにしたものが無機塗料です。

劣化の原因となる有機物を混ぜることになるので半永久に耐久することはありませんが、それでも従来の塗料を超える耐久性を持つ塗料となります。

耐久性のおおよその目安として、それぞれ耐用年数はウレタン塗料8年、シリコン塗料10年、フッ素塗料15年とされていますが、無機塗料は耐用年数20年を超えるといわれています。

無機塗料のメリット

○ 耐候性が高く美観を保てる

先に述べた通り、無機塗料が長持ちなのは樹脂成分に無機物が含まれているからです。無機物とは、鉱石やガラスなど有機物を含まない物質のことで、紫外線に強いという特徴があります。自然界の石などは紫外線に長年さらされても極端に劣化することはありません。

そんな無機物を使った無機塗料も紫外線での劣化が少なく、従来の塗料よりもはるかに耐候性が高いのです。
日本ペイントが行った促進耐候性試験実験(人口太陽光による実験)では、3000時間で95%以上という同社の他の塗料よりも圧倒的に高い光沢保持率が記録されています。

○ 親水性が高く汚れにくい

親水性とは、水との相性の良さです。親水性が高いと水とよく馴染み雨で汚れやホコリなどを浮き上がらせて洗い流せるので、汚れが付きにくくなります。

○ 苔や藻・カビが生えにくい

外壁に根を張る苔や藻・カビは、外壁の見栄えを悪くするだけでなく劣化を促進させてしまいます。無機塗料は栄養源となる有機物の含有が少ないため苔やカビが生えにくいのも耐久性が高い要因のひとつです。

無機塗料の耐久性が高い理由

○ そもそも「無機」とは何か?

「無機」とは、簡潔に言えば「炭素(C)を含まない」ということです。炭素は生物にとっても、無生物にとっても媒介物として非常に重要な役割を果たしており、他の物質と結びつきやすい性質を持っています。

ウレタンやシリコンなど一般的な塗料の樹脂は有機物であり、炭素同士と他の樹脂成分が結びつきあって塗膜を形成しています。この炭素は極めて他の物質と結びつきやすいのですが、反面その結びつきが壊れやすいという特徴もあります。

それに対して無機は炭素を持たないので他の物質と結びつきにくく、そのために壊れやすさを心配する必要もないのです。

身の回りのものでは陶磁器や粘土瓦が無機物にあたります。食器などの陶磁器は劣化しませんし、粘土瓦の耐用年数も50年以上、現役の世界最古の瓦は1400年以上前のものと言われています。

○ 無機の耐用年数の長さの秘密

窯業系サイディングや金属サイディング、モルタル外壁に塗られた塗料が劣化してしまう原因のほとんどは紫外線や加水による分解、つまりは化学変化です。中でも塗膜の寿命を縮める最大の原因は紫外線です。塗膜が結合し続けるエネルギーを持っているのに対し、紫外線は破壊するエネルギーを持っています。

紫外線の持つエネルギーは410kj/molですが、炭素と炭素の結合を中心とした塗膜の結合エネルギーは356kj/molで、紫外線のエネルギーより劣ります。つまり劣化していくのです。

一方で無機塗料の樹脂はケイ素と酸素の組み合わせが多く、こちらは435kj/molの結合エネルギーを持っています。紫外線よりも持つエネルギーが高いため、劣化しにくいのです。少し難しい話ですが、ケイ素がガラスの主原料であることを考えれば、ご納得いただけるのではないでしょうか。

無機塗料を選ぶ際の注意点

○ 無機塗料は無機100%ではない

実は、無機塗料だからといって100%無機物によって作られているわけではありません。
鉱物などを原料とする無機だけでは硬すぎて塗料としての用をなさないため、ある程度有機物を含有させる必要があります。
そのため有機物が含まれている割合や、含有される有機物の種類によって、同じ「無機塗料」と呼ばれるものでも性質や耐用年数は変わってくるのです。
塗装業者からすすめられた塗料がご自身の希望に合っているか、塗料メーカーのWEBサイトなどで説明を確認することが重要です

○ 塗装する場所や材質

無機塗料は、その他の塗料に比べて塗膜が硬い傾向があります。下地が割れやすかったり地震などで大きく動きがある場所には適さないことがあります。

特に木部には向いていないことが多く、塗装をしても塗膜ごと割れてしまう可能性が高いです。しかし柔軟性のある成分を混ぜることで弾性をもった無機塗料も多くあるので、事前に製品説明等で塗装できる場所を確認しておきましょう。

○ 職人の腕

無機塗料は一般的な塗料に比べて硬く、伸びにくいため、それを扱う職人には相応の技術が求められます。せっかくの高性能な塗料でも慣れない職人による施工では機能が十分に発揮されないこともあります。

可能であれば、依頼する業者のこれまでの施工実績等も確認しておくと安心です。

○シーリングの寿命

モルタル、サイディング、ALCなど外壁材問わず施工に使われているのがシーリングです。外壁材同士の目地やサッシ回りなどの隙間に充填されています。

しかしシーリングは一般的に耐用年数が短いものが多く、10年を過ぎると傷みはじめ割れたり剥がれたりという症状があらわれてしまうことがあります。

せっかく無機塗料で外壁塗装したとしても、シーリングがはやく劣化してしまって補修が必要になってしまっては手間ですし、費用も掛かります。無機塗料で塗装を考えるなら、シーリングも長寿命のものをお選びください。

○ 費用が高額

無機塗料は他と比べて費用が高額になります。平米単価では、コストパフォーマンスが良いと言われるシリコン塗料の2倍ほどになることもあります。

反面、耐用年数もシリコン塗料の約2倍あり、また、外壁塗装に掛かる金額は塗料の代金だけではなく、足場の仮設費用なども発生するため、これらの費用を減らせることを考えれば初期費用は高いものの、次の塗り替えまでの期間が長く取れるので長期的コストを考えると経済的といえます。

各メーカーの代表的な無機塗料

○ 日本ペイント アプラウドシェラスターNEO

メーカーが想定している耐用年数は20年。親水性を持つ塗膜がいつまでも建物の綺麗を持続させる。 

有機塗料の高弾性と無機塗料の高耐久性を合わせ持つ塗膜は高い柔軟性を発揮、塗膜表面のひび割れを発生させない。さらに低汚染を求める方へは上塗り後に使用する無機系超低汚染コーティング材「クリスタコート」も用意されている。

○ 日本ペイント パーフェクトセラミックトップG

人気のパーフェクトシリーズの最高峰塗料。本来は固い塗膜の無機塗料をセラミックハイブリッド化することで微弾性を獲得した。紫外線による劣化を防ぐラジカル制御技術ももちろん健在。

パーフェクトセラミックトップGには専用の中塗り塗料が存在し、これと組み合わせて使用される。

○ 関西ペイント アレスダイナミックMUKI

無機とフッ素の組み合わせに、ラジカル抑制技術、親水性による低汚染といった最近のトレンドをすべて盛り込んだ贅沢仕様。こちらも専用の中塗り塗料が用意されている。

メーカーが想定している耐久年数は15年以上。15という数値だけを見れば控えめだが、それ以上となっていることに要注意。

○ エスケー化研 スーパーセラタイトF

こちらも無機とフッ素の組み合わせに、親水性による低汚染、光安定化技術で劣化因子を抑制するという贅沢仕様。こちらも専用の中塗り塗料が用意されている。

メーカーが想定している耐用年数は20年。汚れの付着を防ぐために塗膜表面の静電気を低減させるという仕組みも持っている。

○ ダイフレックス スーパーセランシリーズ

期待耐用年数を「25~30年」としている唯一のメーカー(製品による)。溶剤や水性などさまざまな製品が存在するので、建物や環境に合わせて選ぶことができる。溶剤2液型のスーパーセラン(期待耐用年数25~30年)、弱溶剤1液型のスーパーセランマイルド(期待耐用年数25~28年)、水性塗料のスーパーセランアクア(期待耐用年数25~28年)、屋根も外壁も塗れる遮熱塗料スーパーセランIR(期待耐用年数20年以上)、スーパーセランに柔軟性を持たせたスーパーセランフレックス(期待耐用年数24~26年以上)がラインナップされている。

無機塗料についてのまとめ

・無機塗料は、他の塗料と比べて耐用年数が長い
・費用は高額だが、耐用年数から考えるとコストパフォーマンスは高い
・無機塗料は対候性が高いうえに、汚れにくく苔やカビも生えにくいので長く美観を保てる
・無機塗料が長持ちなのは炭素を含まない無機成分が配合されているため
・現在、無機塗料と呼ばれている塗料は完全な無機ではなく、無機と有機を組み合わせたハイブリッド塗料。配合率や特徴に注意

価格が高くても外壁塗装の効果を長く維持したい方に無機塗料はおすすめです。

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