意外と少ないの?外壁塗装・屋根塗装のメーカー保証

この記事の監修者

佐伯 明彦 (株式会社ソラ SOLA)

所有資格外壁診断士

外壁施工において構造性能や耐火耐久性能など外壁塗装をお考えの方に対して アドバイスをおこなっております。


外壁塗装や屋根塗装を検討されている方、とくにまだ経験したことがない方の中には、さまざまな不安や疑問を抱えている方も多いと思います。

そんなあなたも「保証」という文字を見つけると、少し胸をなでおろすのではないでしょうか。

塗装工事をおこなうのは塗装業者ですが、その塗料を提供するのは製造元である塗料メーカーです。

そのため、塗料メーカーが保証を出すならば、なおのこと安心感を得られると思います。

マンションのような大型物件の大規模修繕などであれば、工事の性格上メーカー保証が必要とされており、各メーカーが所定の条件の元に保証対応をしています。

しかし、戸建ての塗装工事の場合はほとんどのメーカーが保証の対応をしていません。
塗装工事が完了したあと、保証を発行するのは塗装業者です。

今回は、戸建の塗装工事のメーカー保証が、なぜ発行されないのか、その理由や保証内容について説明していきたいと思います。

それでは、見ていきましょう。

なぜ、塗料メーカーの多くが保証を発行しない・できないのか?

当然、どの塗料メーカーも保証すら出せないような自信のない塗料を製造しているわけではありません。

では、どうして保証を出せないかというと、いくつかの問題があるのです。

1.塗料の流通構造の障壁

基本的に、塗料は塗料メーカーから塗料販売店(代理店)を通じて、各塗装業者へと販売されます。

塗料の特徴を伝えるカタログや、正しい施工をおこなうための施工仕様書、注意事項はメーカー側で用意するのですが、それを塗装業者に発信するのは塗料販売店です。

そして、塗装業者はそれぞれの解釈のもと理解し、施主にその知識のもと提案や説明をします。

ただし、メーカー保証を発行するには、サイディングメーカーのように、均一な施工の実現が前提となるのです。

そのためには、施工仕様書に則った塗布量、適切な乾燥時間、最適な下塗り材の選定などが、正しくおこなわれなければいけません。

しかし、先述した流通構造では、メーカーの意図がしっかりと伝わり、おこなわれているか、さらには施主に正しい施工仕様が提案されているか、メーカーが把握することは困難です。

そのため、保証対応ができないという結果になってしまうのです。

2.メーカーの介入

まず、メーカーと施主がつながりを持つことを嫌う塗装業者は少なくありません。

なぜなら、施主がメーカーに直接問い合わせて、最適な下塗り材が違う、工程が違う、施工方法が違う、といったようにメーカーが定めた基準と塗装業者の提案に違いがあると、塗装業者への不信感になり、クレームにつながるからです。

保証対象となる塗膜の剥がれや変色などは、仕様書を守らずに施工した場合や、天候や環境などに左右されて簡単に起こりうる不具合です。

ただし、不具合が発生してからでは、どのような施工をしたのかメーカー側が現場で検証することは簡単ではありません。

3.職人単位でも違いがでる「意識の差」

現在、建築塗装を請け負う業者は、全国に数多くあります。
このすべてが塗料メーカーの仕様書どおりに現場施工しているかというと、残念ながら違います。

もちろん業者の多くは一定水準の施工品質を確保できる技術・知識を備えています。

しかし、その意識は業者や職人によっても異なり、さらに、元請けか下請けかによっても違います。

この個々の意識の差が、均一な施工の実現を困難にしています。

4.資格がなくても塗装できる業界の現状

冒頭で、マンションのような大型物件の大規模修繕にはメーカー保証が発行されると説明しました。
この場合は、建設業許可を取得している元請会社によって建築施工管理技士が各工程を管理し、塗布量は塗料メーカーから提出される出荷証明書で管理されます。

一方で、戸建ての塗装工事は、建設業許可や施工管理の資格が必須というわけではありません。

経験や知識に関係なく誰でも施工ができるため、DIYとの線引きすら難しいのです。

塗料メーカー側も、ひとつひとつの塗装現場や塗装業者を把握・管理することはできません。

管理できない現場施工に対して、保証を出すことは難しため、ほとんどのメーカーが保証の対応をしない・できないのです。

メーカー保証と塗装業者の保証の違い

メーカー保証はほとんど発行されないと先述しましたが、一部のメーカーでは、所定の条件で発行しています。

ここからは、塗料メーカーの保証と、塗装業者の保証の違いを説明していきます。

メーカー保証は製品保証

塗料メーカーの保証は、出荷した塗料の品質に対する「製品保証」です。
一方で、現場で施工する塗装業者は、仕上がりに責任を負います。

製造時や運搬時に問題があった場合、塗料メーカーが即座に対応します。
施工後、保証期間内に何らかの不具合が発生した場合は、その要因を推測・検証して、適切な塗料製品を出荷します。

保証年数と耐用年数はイコールではない

外壁塗装に使用する塗料には、耐用年数があります。

耐用年数は、塗装後の寿命のこと、つまり塗り替え目安の年数のことです。

しかし、塗膜の寿命は、立地条件や環境、塗装箇所などによっても変わってきます。

そのため、メーカー保証の保証期間は、施工仕様書どおりに施工されていることを前提に、どのような環境であっても剥がれや機能不全を起こさないことを考慮して年数を設定しています。

まとめ

今回は、塗料メーカーの保証について説明させていただきました。
いかがでしょうか?

塗装工事の際は、保証の特殊な事情を理解しておいて、安心できる塗装工事になるよう業者に相談してくださいね。

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